東京音楽大学付属民族音楽研究所

2018年度公開講座No.2

童謡作曲家の世界
〜成田為三から中山晋平まで〜

講座詳細

開催日程 2018年 7月 18日
場所 東京音楽大学J館スタジオ
入場料 入場無料
申し込み 予約不要。当日先着順のご入場となります。
定員 200名

講座内容

童謡初の楽曲《かなりや》を作曲し『赤い鳥』童謡の礎を築いた成田為三。

圧倒的な技量で前衛的な芸術音楽と子どもの歌謡との融合を図った山田耕筰。

古来の日本音楽の伝統に深く学んで新たな音楽の境地を開拓した本居長世。

そして、親しみやすいメロディーで圧倒的な人気を勝ち取った中山晋平。

童謡の100年の歴史のなかでも、この4人の個性はとりわけ異彩を放っています。

童謡の作曲に取り組みながら、彼らはどのようにその実力を発揮し、それぞれの生きた時代やメディア環境と対峙していったのでしょうか。

今回のコンサートでは、彼らの作曲法の特徴をわかりやすく解説しながら、それぞれの個性の違いをたっぷりと味わっていきます。

4人の作曲家の個性や特徴をそれぞれ7~8分程度で解説してきます。

(1)成田為三:『赤い鳥』の童謡の音楽的な基礎を築いた。

鈴木三重吉が進めた音楽事業は、童謡の作曲のみならず、楽譜の一般公募、音楽会の開催、レコードの吹き込み、児童歌劇団の設立など多岐にわたったが、これを支えたのが成田為三だった。

しかし、彼らは、童謡とは楽譜化された音楽ではなく、自由に歌われる詩であると考えた北原白秋とは対立していった。

白秋が理想とした童謡のあり方については、朗読レコード《思ひ出》を音源として用いつつ簡単に解説する。

(2)山田耕筰:ドイツ・ロシアの最先端の音楽理論を学ぶ。

子どもの音楽のなかにも、前衛的な音楽や舞踊の要素が取り入れられている。

当初は子どもが歌えないような高度な技術が必要な童謡(ほぼ日本歌曲)ばかり作っていて、《赤とんぼ》《この道》のような歌いやすいものは少なかった。

メロディーの作り方としては、日本語の高低アクセントを忠実に再現しようとしていて、童謡の作曲を拒否していた北原白秋とも協力。

オーケストラの設立やラジオ出演など、対外活動にも旺盛に取り組んだ。

(3)本居長世:20代半ばで芸大助教授となりピアノ・和声を教える。

山田耕筰とはライバル関係にあったが、日本国内でのエリート街道を歩み、作曲の本格的な勉強はしていない。

合唱曲やピアノ曲など小品が中心。その一方で、日本の伝統音楽を本格的に調査・研究して、その要素を童謡の作曲に取り入れていった。

高低アクセントを忠実に守るとともに、日本的な音階に基づく作曲を心掛けていたことが特徴的。

対外的な活動としては、百貨店でのお伽歌劇の作曲や娘を連れた公演旅行などを行い、大正期のレコード業界内の常識を刷新しながら気鋭の作曲家として活躍。

(4)中山晋平:長世の後輩(あるいは弟子)。

民謡音階を巧みに用いつつも、ヨナ抜き音階の唱歌調の楽曲も多かった。

自身がピアノを苦手としていたこともあり、シンプルな伴奏に日本の伝統的な音楽の要素を少し加えた作曲が特徴的で、

前2者に比べてエリート志向が希薄。レコード流行歌の作曲家としても活躍し、大衆的な人気を誇った。

日本語の高低アクセントに関してはほとんど関心を寄せておらず、親しみやすく子どもが喜ぶようなメロディーの作曲を心掛けた。

出演者

  • 周東美材
    解説
  • 稲村なおこ
    歌手
  • 西山琴絵
    歌手
  • 上 雅子
    ピアニスト

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